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虎は死して皮を残す
VOL.10
 大正末期から昭和初期の俳壇にその異才を投じ、人々の罵り、嗤いの中で狂死した自己顕示欲の俳人、杉田久女が甦える。田辺聖子はその著「花衣ぬぐやまつわる…」で、「人と作品の妖しい乖離に、抗しがたい魔力を感じないではいられない。久女は死後40年を経て、ようやく生き直しつつある。」と、愛情を注ぐ。
 ゴッホの傑作「ひまわり」が53億円だとか。百年前、あれ程DIG. DUG. DIGして、たった1枚売れた絵は耳の治療代にもならず狂死果てた。君知るやゴッホの乖離の不幸をー偉大な過去に身を委せるオカマしないで、“ほら、53億円氏、いるでしょう?君のすぐ隣に熱く息づく金を欲しがる次代の「ゴッホ」や「久女」が。”
 “ヤスダーッ”氏と田辺聖子の距離はもう、卑小と僥倖、隅田川と首の皮のようなものです。

 虚子嫌い かな女嫌いの 単帯 (久女)

[皮算用する虎ぬ狸]
(1987.5.1記)