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予告された殺人の記録
CRONICA DE  UNAMUERTE ANNUNCIADA

VOL.55
 ノーベル賞作家G・マルケスの『予告された殺人の記録』を原作にした問題作『血祭りの朝』('90李少紅監督)。この中国翻案版に対して、伊の名匠F・ロージの原作と同題名作品('87伊・仏)は、マルケスの生地コロンビアにオールロケし、その美しい自然を背景に、非現実的な白昼夢をギリシャ劇風(イレーネ・パパス!)に描いている。
 27年振り、故郷に戻ってきた医師の私(J・M・ボロンテ)は、“砕けた記憶の鏡を元通りにする為”に親友サンディアゴの死の真相の究明を始める。殺人事件は、27年前、一人のよそ者がやってきた所から始まる。やがて美女アンヘラと、七面鳥40羽、豚11頭、牛4頭、酒二千本の盛大な婚礼を挙げるが、生娘でなかった為、実家に戻される。誰が処女を奪ったのか?――名指しされたサンディアゴはアンヘラの双子の兄弟に殺人の予告を受ける。医師の記憶の中で、閉ざされた共同体と忘れられた町が交錯し、人々のあさましさ、醜さがカットバックされる。
 二日続きのラム酒漬けになりながら、目を血走らせている双子の兄弟、失意のラム酒を浴びて昏倒する新郎――ここのホワイト・ラムは、サンティアゴを生贄にして血の祝祭空間を成り立たせる必需品として、研ぎ出されたナイフや民衆と共に準備された小道具なのだ。
 まるで、ボルヘス原作のベルトリッチ作品『暗殺のオペラ』が二重写しに浮かんでしまう悪夢のような……。