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アスファルト・ジャングル
       THE ASFHALT JUNGLE

VOL.54

 『アスファルト・ジャングル』('50J・ヒューストン監督)に無名のマリリン・モンローが端役で出演しているが、初期の向う気の毒とも、後期のおつむの弱い性的爆弾とも全く違うイノセントが話題になることはない。
 が、映画は通好みの本格的ハードボイルドで、教授と呼ばれる老ギャング(ドク)役のサム・ジャフェはベネチアで主演賞を獲っているし、姪のマリリンを情婦に囲う大物弁護士(エマリック)役の L・カルハーンのエセ紳士振りも渋い。ディックス(S・ヘイドン)は故郷の牧場でサラブレッドを育てていた幼少の頃に囚われていて、今は競馬と強盗に身をやつしている。そして、ドクと仲間の綿密な100万$宝石強盗の計画は実行されるが……。
 仲間を裏切り、姪の純真を傷つけた人品堕ちたエマリックの独白、「彼等は別に変った人間ではない。人間の努力が裏側に現われたにすぎない」――裏側のある者は死を選び、ある者はム所へ、銃弾を受けたディックスは懐かしの故郷を目指す――ドクと初めて会った時、故郷の酒(※バーボン・ウイスキー)を飲ると「故郷どこかね?」と聞かれ「ケンタッキー、ブーン郡、水が最高だ、だから最高なんだ」と自慢した故郷を――195Bの上背、童顔のヘイドンは、キューブリックの『現金に体を張れ』でも同様、その巨体の悪漢が何とも哀感をさそうのだ。

(※ケンタッキー産のみバーボン・ウイスキーと云い、例えばジャック・ダニエル等はテネシーウイスキーとして区別する。)