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流れを汲みて源を知る
VOL.16
 禁煙運動の猛威はすさまじくアメーバ状にそのゾーンを拡げ、愛煙家はますます肩身を狭くする。昔紅茶きのこ、今レシチン、ストレッチにエアロビクスやテニスで金妻したりされたり、時間の節約はテイクアウトの揚げ物、惣菜の添加物入り、アトピー性皮膚炎の赤子が続出し、ジョギング最中に息絶えて、それでもテーマは“死んでも健康は守る”。ヒステリックな健康の叫び声は数を頼り<時代>にヘルス・ファシズムを生む。
 反ナチといえば、ブレヒトの喫煙劇場いま何処。劇場と言えば、我が町下北沢の4館あった映画館のうち最後の1館が遂に消えて、何とヘルス・クラブになる。なんという不幸な町──時代の子供達。映画館はかつて不良と煙と不健康のむせ返る学舎、計り事を企てる暗闇だった。今は大手企業の戦略としての映画製作の時代、リクライニングシートに入れ替え制、インテリジェントビルの中、クラッシック音楽を聴く気分になって。

[サム・ザ・ライオン]

(1987.11.1記)