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バレンチノ
VALENTINO

VOL.70
異国趣味に熱狂していたハリウッドで、'26年、一大マチネ・スター(性的魅力で女性のマゾヒズムをくすぐる)のバレンチノが急逝した。この伝説のスター伝を映画化('77)したのが異才監督K・ラッセルで、主役は旧ソ連を亡命した無比のダンサーR・ヌレエフだ。
冒頭の葬儀シーンから、悲嘆と乱痴気がラッセル的に(大袈裟にケバく、非現実的に、だが華麗に)展開され、親しい参列者の回想がフラッシュバックによって暴かれていく。--- オレンジ栽培を夢見て新天地にやってきたダンサーはジゴロ生活を送っていた---NYを逃げてハリウッドの安キャバレーで踊っていた時、頭の弱い女優と知り合う---家に招かれたバレンチノは、一年前ダラスでウェイトレスをしていた足りない女が、即ち、豪華アパートを持てる映画の世界があることを知る---酌みかわすクリーミィなラモス・フィズ(ジン&ミルクカクテル)こそ伝説への第一歩を印すパスポートだった。
メトロの脚本家ジューン・マジスの強引な押しで、すぐスターの座に付くが、やがて性スキャンダルの囮になり-----二ジンスキーと踊るタンゴ・シーンはその性を表わして象徴的だ。“ピンクのパフ・ルディ”は、ケリ−の店『スピークイージー(ドライロウ・エイジ)』でバーボンを飲み比べ、汚名は注ぐが、その晩31才で他界した。媚薬と反吐が内混ぜになった画面は、爛熟と生き急ぎの'20年代の表象か、実際のジューンは翌'27年に死に、彼の墓と並んで埋葬されたが、彼女の愛の視線が救いとなっていた。