top top
top top top











ストリート・オブ・ノー・リターン
STREET OF NO RETURN

VOL.71
古くはゴダ−ルから最近ではN・YインディーズのA・ロックウェル(『イン・ザ・スープ』が封切中)の『父の恋人』('89)に出演する等、世界の映画作家の神的存在、はたまた不良爺のサミュエル・フラーが、78才の時に撮った麻薬的恍惚感に満ちた異色のメロドラマが、『ストリート・オブ・ノー・リターン』('89仏・ポルト)だ。   
黒街のボス・エディの女シリア(V・バルガス)に手を出し、喉を切り裂かれて浮浪者に転落したマイケル(K・キャラダイン)の心を夜毎慰めてくれるのは、スラム街のゴミ箱や道端に転がる空瓶に残った贅沢この上ない幾多の高級酒 (ジャンク・リカー)だった。アル中の近寄り難い風体に眼光鋭い銀髪の妖鬼さながらのキャラダインは、まるでフラーの容姿そのものに二重写しされる。
その眼に邂逅する一流歌手だった頃、束になって寄ってきた女共、だが本気だったシリアには、全てを捨てて向ったのだが・・・黒人暴動に巻き込まれ、警官殺しの容疑から脱走したのをきっかけに、男の思い切なく愛と復讐のため立ち上がったマイケルは、黒人署長に協力して、エディの黒い陰謀を潰しシリアを助けだす。そして、署長の褒美のさらのJ&B(スコッチ・ウイスキー)

フルボトルを小脇に、再びスラム街に舞い戻っていく。歌手としてのキャラダインが歌うラブ・ソングが背後に流れる。
'90年、東京でのフラー映画祭はある賑いを見せたが、D・ホッパーやM・スコセッシ、W・ヴェンダーズ等が私淑する御大も、日本では不当な扱い甚だしい。