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マッシュ
M★A★S★H

VOL.58
 '92年カンヌ映画祭で監督賞を獲った『ザ・プレーヤー』(未公開)が、ハリウッド内幕物や配役の他に65人の有名スターが本人役で出演とかで、又は映画手法として話題だ。'70年代の時代精神を最も表現したといえる映画作家R・アルトマンは、『M★A★S★H』('70)で、同じカンヌでグランプリを獲り名声を得る。
 軍隊と戦争の愚を強烈な笑劇(ファルス)で描いているが、映画の必須条件をはずさず、つまり劇映画の視点からシニカルにアメリカを射たその後の作品群も含めて、テーマ主義に傾いた'67年に始まったニューシネマ作品群とは、一過性では無いという意味でも一線を画している。
 '50年の朝鮮、日本の“東京シューシャインボーイズ”が流れる前線基地の移動野戦病院(MASH)は、日夜臓物や手足を切ったり縫ったり、D・サザーランドとE・グールドの腕利き軍医が居ないと始まらないのだが、この二人、堅物上官とグラマー婦長のベッドの興奮を、隠しマイクで兵舎に生中継するは、下の毛が金髪かどうか暴いたりと、軍規破りの破廉恥な行動が爽快感を呼ぶ。
 野戦テントでマティーニを飲るが、グールドが「折角のマティーニもオリーブ無しじゃ半減する」といって、内ポケットから瓶を取り出すのは、B・ワイルダーの『麗しのサブリナ』のパロディだし、巨根の歯科医が不能になったと“自殺の儀式”でパンとワインを12人が囲むのは“最後の晩餐”つまりL・ブニュエルの『ビリディアナ』のパロディということになる。