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巨人と玩具    

VOL.45

 製菓会社の宣伝部のすさまじい商戦を描いた増村保造監督の第5作目に当たる。『巨人と玩具』('58)は、開高健の同名小説の映画化で、マスコミ社会の悪しきメカニズムを皮肉を込めて戯画化している。
 ワールド製菓の宣伝員西(川口浩)は、鉄壁課長を仕事で羨望し人格で疑問視するが逃れられない。級友の横山はG製菓にいて、その知人のキャリア・ウーマンまゆみはA製菓にいる。人工衛星アポロは月に飛ぶが、不景気風は街に吹き、'60年安保前の不安な時代、溜まり場のクラブで西はまゆみに“平和な顔してるわ”と鼻であしらわれるが、三人はハイ・ボールで乾杯、合戦の火蓋を切る。――ハイ・ボールは時代のカクテルだがここでは危険な酒だった――西は景品を宇宙グッズに決め、虫歯の京子(野添ひとみ)をキャンペーン・ガールに作りあげるが、相手の企業秘密を知りたくてまゆみに近づき、逆に女体の手練手管に自社の作戦をばらしてしまう。横山の策略で苦労して作った京子の裏切りにもあってしまう。部長に昇進した元課長が吐血するのを見て、西は自ら宇宙服に身を包み一人夜の街へキャンペーンに出る。血の引いた無表情な彼を追ってきたまゆみがささやく。“笑うのよ…明るく”と。当時より企業戦士は挫折を知らないのが恐ろしい。
 キャラクターをデフォルメした、スピード感溢れる演出描破はモダニズム感覚に満ちている。