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インテルビスタ
INTERVISTA

VOL.63
 今年の第65回アカデミー賞でF.フェリーニが特別名誉賞を受賞した際、客席にいた妻であり同志であるジュリエッタが大粒の涙を流し、フェリーニが彼女に声を掛ける光景が全映画人の感動を誘った。
 --夢を見た。闇の中にいた。懐かしい闇の中を手探りで飛ぶと眼下に見えたのは映画都市(チネチッタ)だった!--と、始まるフェリーニ晩年の魔術『インテルビスタ』('87)は、チネチッタ50周年に捧げた記念作品なのだ。
 映画内映画、カフカの『アメリカ』の撮影の舞台裏を、魂の都(チネチッタ)の挿話を混ぜながら撮影進行するのだが、『アメリカ』の監督役(Mr.ヒステリー)の虚構のフェリーニと、日本のTV取材を受ける映画内現実のフェリーニを演じるフェリーニ、更に47年前、ここ(チネチッタ)を訪れた若きフェリーニ役がいる、それらを同一時間に押し込んで観客を翻弄するのは、勿論フェリーニだ。この四重の虚構性の中で、フェリーニ好みの仰々しい装置、サーカス風デブ女や動物を登場させて、錬金術的に祝祭空間を創り上げる。
 ある日、突然フェリーニに誘われてM.マストロヤンニはA.エクバーグの別荘に行く。27年前の名画『甘い生活』を観る。グラッパ(カス取りブランデー)のグラスを手にした、今や老いて太ったアニタは感動の涙を流し、マルチェロと乾杯、赤ワイン(ピエモンテ)を干した監督、スタッフから祝福されるシーンは、正しく虚実を迷わせて、美しい。
 常套の構成を無視した作りと、表層の郷愁を越えて、フェリーニ流の映画への愛と魂に満ちている。