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ガルシアの首
=BRING ME THE HEAD OF A.GARSIA

VOL.38

 権力者の愛娘を妊娠させたガルシアに百万ドルの賞金が懸かる。西部の終末を撮り続けたサム・ペキンパーが『ゲッタウェイ』('72)のS・マックィーンでメキシコに脱出したその後が、この『ガルシアの首』('74)の話だ。ペキンパー描く男は全作品そうだが、皆疲れていて中途半端に中年を迎えてしまった奴等ばかりだ。過ぎる哀愁と甘い感傷で狼達の挽歌を詠い、微細極まる編集技とあの特異の超ハイスピード撮影で暴力の傷口を拡げて魅せる。いつだって血と砂と汗の匂いの混ざった風が吹いている。
 二人組の殺し屋ギグ・ヤングとロバート・ウェーバーが酒場にやってきて、しがない中年ピアノ弾きペニー(W・オーツ!)と対決する。ペニーは殺し屋にテキーラ&ビールを奢り、ペニーはJ・ダニエルを貰い“百年前にドイツから技術を習い、今じゃメキシコのビールが一番さ”等ほざくが、「今夜どう?」と酒場の女の手が殺し屋の股間を這った時、一瞬にして殺し屋の肘打ちが始まり緊張が走る。と同時に、この初老の殺し屋達はホモ同志だと察せられ泣ける。――倒れる女――殺し屋の微笑――サングラスのペニーの眼――ビクつく客達――ジャズの“思い出の四月”を弾くペニー(これ以外は全編悲愁に満ちたメキシコ音楽で溢れている。)――ガルシアの首を求めてペニーと中年女のイイ女イセラ・ベガの旅は始まる。切なく酷い旅の始まり。一丁の拳銃とクエルボを抱えて…。