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紅いコーリャン(紅高梁)=RED SORGHUM

VOL.28

 『菊豆』が評判の張芸謀のデビュー作が'88ベルリン映画祭金獅子賞を獲得した力作「紅いコーリャン」(中国)。ヒロインも同じくコンリーだ。
 '20年代の山東省。若いチアウルは造り酒屋に嫁ぐがハンセン病の主人はすぐ謎の死を遂げる。人の背も覆う広大なコーリャンの緑が風に揺れカメラがアップで駆ける。逆光を浴びたコーリャンが陽に染まりチアウルは犯される。こうして始まる過酷な運命にも翻弄されることなく、冷徹に現実に処して行くヒロインの姿が静かな激しさで展開される。
 人里離れた山中で身代を守り酒造りに精を出す。釜入れが始まり燃える火の中で酒が醸される。やがて真紅の高梁酒が樽に落ちる!祝祭の儀式が始まる。チアウルを犯した男が悪ふざけで樽に小便をすると何と!かつてない名酒が仕上がる。名付けて「十八里紅」――9年経ち「十八里紅」は有名になる。コーリャン畑で出来た子供も19才になった時、日本軍はこんな田舎へもやってくる。陽に紅く映えるコーリャンはことごとく倒され、替わりに銃剣を浴びた血が光景を残酷に染める。――そして遂に、コーリャン火焔瓶の炎と同化した聖水の使徒達の血は、太陽の紅の内に三位一体となって残された子供を包む。
 切れ味鋭い色彩へのこだわりと、生命力溢れる画面が、この神話的物語に有無を云わせぬ強力なリアリティーを与えている。陶酔!