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シャンパン九二一=Champagne 1921 

VOL.17

 過日、ロシア皇帝ニコライ二世一家の処刑を綴った手記を、当時のボリシェビキ処刑部隊長がロンドン紙に発表し、レーニンの直接命令だった事が明らかになった。――映画「追想」('56 A・リトバク監督)は、第四女アナスタシアの生存説を下敷きに、パリに亡命の策師ブーニン将軍(Y・ブリナー)が記憶喪失の女アンナ(I・バーグマン)を仕立て、ロンドン銀行に眠る一億ポンドの遺産を狙うお話。アナスタシアの生立ちを全て空んじ、作法を身につけたアンナとブーニンは、最後の決め手大皇女を陥し入れる為に、昔の婚約者で好き者の甥の殿下にコペンハーゲンの劇場で接近、チボリで逢い引き、「一九二一年のシャンパンは美味!二人に乾杯!」とすっかり殿下をその気にさせる。遂に大皇女も陥落させて話は超豪華な披露パーティへ…だが、(アナスタシア)がアンナを離れてアナスタシアになって行くことにブーニンは成功を殆ど掌中に入れながら心が晴れない。道具だった女を愛してしまったのだ。(アナスタシア)も「強くて舌を射すウォッカ好き」の悪党振るブーニンが心から離れない。もはや、アンナでもアナスタシアでもどうでも良くなり―――。
 冒頭の手記で、現実の皇女アナスタシアの処刑も明言されていて、本人と称する遺産相続事件や、生存説にもピリオドを打つことになった。