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君子は豹変す
VOL.24
 薄黒い古ビル群、めくれた壁、放たれる為にある窓は閉ざされたままの不幸、急に堆積土が行く手を塞ぐ大通り、広大な空き地内に深く広くえぐられた巨大な穴とその廃土が作った黒茶の小山の光景は、日本の戦後の新開地の様──そこに勝手に被災者、被爆者や朝鮮人がバラックを建て、一応、竈から夕餉の煙を立てる。
 そしてその廻りは同時に、明日の日本をになう子供達の、只のやせた土だけの遊び場──。

 今日5月20日、今にも降り出しそうな低くたれこめる雨雲の東ベルリンに立ち、西ベルリンは昨日迄、嘘のような初夏(!)だったのに、壁一つでこれか!と仰天してしまう。

 勿論、整備された大並木通り、美術館、劇場等は数多くあるが、かつての栄光のベルリンを想う時、その復興を手がけるよりは、立派な壁造りに日々精進していた愚挙が突出する。

 西に戻って再び、国籍のない都市ベルリンの彷徨に視る。
 陸の孤島という緊張感と、それ故アナーキーで自由な発想の開花に激しく個を主張する都市は、今確実に天使の眼差しを得て、最も現代を語ろうとしているようだ。

[コロンボ]

(1988.7.1記)