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時計じかけのオレンジ
A CLOCKWORK ORANGE

VOL.67
 電子音楽の先駆者W(ウォルター).カルロスが演奏するパーセル作曲「クイーン・メリー葬送曲」がサイケに流れて、血の通わぬ奇怪な空間にアレックス(M.マクダウェル)をボスとする4人組ドルーグ(チンピラ)がアップする。S.キューブリックの『時計じかけのオレンジ』(’71英)は全篇暴力性に満ちている−−。今夜も悪を思索するのは、ミルク・バーのコロバ。グラスの中はウルトラ・ミルクで、それぞれMOLOKO(ミルク)+VELLOCET(ベロゼット),+SYNTEMESC(シンセメスク)+DRENCROM(ドレンコルム)を飲っている。素裸の女のおっぱいから出るウルトラ・ミルク(カクセイザイ)は超(ウルトラ)暴力へ盛り上る誘導剤だ。
 全篇を覆う監督の皮肉の精神は、荒廃したゴミだらけの未来都市で他の一派(ドルーグ)と争う時、ロッシーニの「泥棒カササギ」を流し、血と暴力と陽気な伊オペラをくっつけたり、本来美しい「雨に唄えば」を唄いながら蹴り、嬲り、レイプしたり、又一日の終り、ルドイッヒ(ベートーベン)の「第九」で悪魔的世界の支配者を夢想したり、音楽との取り合わせ方にこだわる。そして殺人を犯したアレックスは覚醒剤で洗脳(ヒツジに)されるが、自殺が未遂に終るや元の悪意に満ちた顔に戻ると音楽は「4楽章・歓喜の歌」。−−今度は政府お墨付きのデボチカ(オンナ)をインアウト(セックス)するガリバー(チンポコ)と超暴力だ。『博士の異常な愛情』、『2001年宇宙の旅』に続く三部作の最後で厭世観を強めたキューブリックの徹底したブラック・ユーモアは、終わりのクレジット・ロールに迄本家ジーン・ケリ−(雨に唄えば)の歌がノー天気に流れる−−“アイム・ハッピー・アゲイン…”