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インディアン・ランナー
THE INDIAN RUNNER

VOL.65
 国際共同制作会社MICO(マイコ)(日本企業数十社)が製作したハリウッド第一弾が、俳優引退宣言をしたS.ペンの初監督作品『インディアン・ランナー』('91)だ。
 彼の真摯な技法は、一つのアクションが完了する迄の前的な手立が非常に長く緻密とか、路上でインディアンと擦れ違う時の敬虔な時間を、圧倒量フィルムに焼き付ける(高速度撮影)とかに感じ取れる。
 田舎のネブラスカ'68年、農場経営に失敗した真面目な兄ジョン(デビッド・モース)はハイウェイ・パトロールマン。ぐれた弟フランク(ビコー・モーテンセン)がベトナムから帰ってくる。母が死に、人生に悲嘆した父(老けたC.ブロンソンが悲しく良い)も自ら命を断つ。側には、銃と横倒しになったサザンカンフォート(バーボン・ピーチ・リキュール)瓶と飲み干してないロック・グラスが残された。弟の戦争で病んだ精神は、やさしさと凶暴性を極限化し、その純粋性は、森の主、鹿を捕えて自ら神と一体化するインディアン(メッセンジャー)となって、夜の闇を疾走する。
 映画はペンの魂の浄化を問うメッセージであり、追体験でしか知る由のなかったガキペンの、時代にノーを突きつけた米ニュー・シネマへのオマージュである。
 そのことは、ジャニスのあの「サマー・タイム」を背中に聴き、サザンカンフォートで潰れていく弟の姿や、カウンター・カルチャーの大兄貴D.ホッパーに酒場のおやじ役を演らせて、しかも、落ちこぼれの弟に叩き殺されると云う時代の逆説に良く表れている。