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情婦 WITNESS FOR THE PROSECUTION     

VOL.52

 M・デートリッヒの代表作に、A・クリスティー原作、B・ワイルダー監督の上質ミステリー『情婦』('58)がある。
 ロンドンでケチな生活を続けていたレナード(T・パワー)は有閑老婦人と会い、“シェリー酒”の歓待を受ける仲になるが、痴情か金か、老婦人は殺され重要容疑者にされる。辣腕弁護士ロバート卿(C・ロートン)が引受けるが、アリバイを立証するのは妻クリスチーヌ(M・デートリッヒ)しかいない。だが妻は証人には立てない。思わぬ難事件に、心臓病で退院したばかりの禁酒、禁煙を命じられたロバート卿も苛立つ。そこで、五月蝿い看護婦が入れたココアのポットを“コニャック”にすり替え、法廷に出陣するのだが……。
 公判の日、何と、検察側証人としてクリスチーヌが出廷し、夫を有罪に陥れるべく性悪女を演じた晩、窮地に立たされたロバート卿は、ヒューストン駅のバーで、救いを求めるようにあばれだす女と取り引きする――真相を暴くという手紙と、45ポンドに安物“ブレンド・スコッチ”二杯。溺れる者はカミソリの刃をも掴む。実は、このあばずれ女こそ……。いやいや、真相の口外は慎まねば監督に怒られますので。
 この映画で30代にしか見えないデートリッヒの実年齢は57才。ほんに妖怪と云うのが適切であろう。