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天に向って唾を吐く
VOL.93

 一昨年四月の原宿のスタイリスト殺人事件で先月中旬、国際指名手配されたイラン人容疑者の身柄引き渡しをスウェーデン政府が拒否した。“「死刑にならない保証」を死刑制度国日本に求める事ができない”というのが理由だ。永野前法相は就任直後、「私は死刑の印は躊躇なく押します。何故ならば公正な裁判の結果だから」と毅然と戯言をたれた。何という感覚のズレ、人が人の死を裁くこと自体、或は冤罪に苦しむ多くの容疑者の現況がまるで無い。尤も「南京虐殺はデッチ上げだ」と毅然といって即ち前言を翻して辞めた御仁だが、次の中井法相の一言も数年間地道に築いてきた夢の世界をグラリと崩した。
 マラドーナは三年前の事件で刑罰を終えていて、法務省は昨年四月在留資格証明書を発行しているにも関らず、これを一蹴し、「麻薬撲滅の見本として毅然たる姿勢を取った」と胸を張った。かくして、マラドーナの入国拒否はアルゼンチンチームの来日拒否となり、日本は国際サッカー連盟にソッポを向かれアジアで完全に孤立した。国際文化の無知と感覚の欠如が明らかになった今でも再考の気配も見せない毅然たる頑迷さは、'33年大東亜共栄圏を夢見て悲惨につき進んだ国際連盟脱退事件を思い起こさせるよ、松岡くん。ん?連盟違いではあったな。

(暁のイレブン)

(1994.4記)