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行く川の流れは絶えずして 元の水にあらず
VOL.71

 かつての3K(汚い暗い煙い)ジャズからガラリと模様替えした<本場出稼ぎジャズ>を聴かせる高いクラブの繁盛振りを伝えるマスコミに、“ジャズが腑抜けになって幾久しいだろうか”と考える。かつてジャズは、お茶の水、羽田、新宿といった戦地を理論武装し、共同体幻想のエナジーを駆り立てた。まるでジャズを介在してブラックと共生できるかの様に。やがて挫折の70年代ー「ジャズは燃えつきたか」「ジャズの死と再生」「ジャズ・変革のエナジー」等と各紙が危機を煽った。ー雌伏十余年
 今、外タレは金満日本に靡き、日本人音楽家は流行のようにアジアに向かい、音楽的発展とルーツを訪ねる。ジャズとラップのUSブラック、スパイク・リーが新作「マルコムX」でパンアフリカニズムを唱う。ルーツ探求が民俗的必然としての創造である限り、その精神行為に悠久と胸さわぎを憶える。パンアジアは動き始めているし、アフロ・ビートは世界を打つ。だがしかし、歴史のからくりはルーツ捜しに自己撞着を用意する。日本とアジアは悲しいかな別人種だし、アメリカとアフリカは既に別人種だ。少なくとも大陸が一つに結ぶより、人類は地球の滅亡を早めるだろう。白とか黒とか黄とか運動会をやってる内に、音の精霊は退化してしまうし。

(アレックス・ヘイリー)

(1992.6記)