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四十肩に五十腕
VOL.53

 地球には唯一水の惑星だ。水は様々な生物を誕生させ、その化学変化は空気を和らげる。特に日本は四季に恵まれ、古来「花鳥風月」はよく絵や詩歌の題材とする。最も近頃は生態系を狂わせる虐待。収奪を繰りかえす多くの日本人に「花鳥風月」の風流を振り返る余裕はない。自然の逆襲は季節はずれの歳末台風で多くの死者を出し、90年の暮れを閉じる。

 愁いも憶えぬ暖秋の日本で、世界のモダンダンス界最高峰のマーサ・グラハムが観客の魂を奪いとり、童的悪意に満ちたリンゼイ・ケンプが強い衝撃で観客の胆を試していた時、我がアルヘンチーナ大野一雄はドイツやパリで“命”を踊っていたという。――プログラムは、植物の一生に人間の誕生と死のイメージを重ねたおなじみ「睡蓮」に、日本未公開の「花鳥風月」であった。氏曰く「生命から生命が生まれたように命の介在を表現したい」と。91年日本公開を乞う!

 森羅万象と魂の波動を行えるのは、もはや開かれた、しなう肉体しかないのか!?――ちなみに、M・グラハム96才、大野一雄84才。

(高浜虚無子)

(1990.12記)