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破れ鍋にとじ蓋
VOL.38

 秋の婦人向新刊雑誌のラッシュだ。ある女性編集長が編集者を集め、表紙だけはずして中味と合わせる実験をした所、無残な結果に終わったそうだ。新刊担当者には苛酷だが、読者にも益々苛酷だ。又昨今のイベントの盛況も凄い。「・・・博」「・・・ピア」と国や府県の「パビリオン」に音楽や様々なアートが吸い込まれ吐き出されているが、お題目が全く別個の中、創造個体そのものが持つ力や衝撃、感情を惹起させ得ない。やはり表紙を替えただけの使い捨て品になってしまう。

 建築家安藤忠雄は大阪中之島の多くの明治大正の建築物が取り壊されることに異議を唱え、人間の精神的エネルギーに役立つ都市再生案「中之島2001」で問題提起する。今や独立した街の貌を持つ世田谷下北沢でも、20年も前から「小田急線地下化・地上緑化」運動が続いているが、小田急と都側の「高架化・商業ビル」案の経済力学の前に風前の灯火の按配だ。

 科学者や芸術家はやはり、スピードと効率のメカニズムに全く歯が立たないまま21世紀に突入するのか、ボイジャーよ、海王星から地球を観測すると、この星のどんなモノを映し出すのだろうか?

(テン・リトル・インディアン・ボーイ)

(1989.9.1記)