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蟷螂の斧
VOL.32
 2月只中とはいえ、LOSに着くと吹雪だった。4日後、東のNYに向う零下8度、“うん、冬のNYだ”と思っていると、数日経て、Tシャツ姿も街に見かける以上暖冬の日が突如現れる。地球上にCO2が増量した為の温室効果現象。

 大昔、吉本隆明は「本当のことを云おうか」云えば「世界は凍る」と恫喝したが、“南極の氷が溶解しそうだってのに、とんでもねえ”と街を横切ると、アルゴンキン・ホテル(1902年建)のブルー・バーが全てを包み込んで迎え入れる。密会的な暗さと重厚な樫の壁に掛った“ザ・ニューヨーカー”で有名なJ・サーバー(1965年没)のコミックの数々、幸福感に浸る間も無く当ホテルが日本のA建設に買収されたと知る。

  「ジャパン アズ No.1」伝統でも何でも買えば良いが地球上の酸素とオゾンを買い占めてはどんなものか。

 大谷石も大陥没、全ては人為に帰す。とっくの1916年にグリフィスは「大破と牢獄の鉄格子に鍛えられた不寛容」をテーマに<愛と平和>を映画に託したのだが

  “世界が美しいだなんて”ねッ、吉本隆明が間違っているのだなんて、誰にも云わせない。

(ツァラッストラ)

(1989.3.1記)