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沓を隔てて痒きを掻く
VOL.17
 “俳優の東大”といわれた俳優座養成所が22年振りに復活するという。だが育成を短大に託した長年の失敗を反省してのこと。黄金期の再来はどうでしょう。今、演劇が流行、アングラで万人を呼ぶ時代。とはいえ、演劇が成立しているのではなく、動員力にたけているだけ。それは観客の参加意識、テレビに比してペダンチック、自己の話題作り等が演る側のマスコミ操作の巧みなノウハウとマッチする。一人の内なる観客を照らし得ず、只のキャラクターが役づくりなどの次元の問題ではない。
 子規は自ら巣を作らず、その黄斑で威しうぐいすの等の巣に混ざって託卵する。うぐいすは知らずに育てるが自然界は恐ろしい。子規が何故か一日早く孵化し、その日の内に目も見えぬそのヒナは他の卵を落としにかかる。うぐいすは自分の種族を滅ぼすこのヒナにせっせとえさを運んで育てる、のだそうだ。で、虫も殺さぬ“その顔で何を喰うかやほととぎす”というおぞましき魅力の出現を期待します、俳優座様。

[沓掛の閑古鳥]

(1987.12.1記)