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ポン酢醤油のある家さー現代幸福論
VOL.11
 「第三のコース、桂次郎君…」と叫んで“家宅の人”は、ひぼしの鮭そっくりの息子の自足の、満ちたりた、淋しい、幽玄の笑い声を聞き、冷蔵庫内のビールとハムがある幸せを確認して今人は、オリビエ・メシアン作曲の一大叙事詩「トゥランガリラ交響曲」を聴く。曰く、「トゥランガリラは宇宙に対する敬虔な遊び、生と死の遊び、歓喜への讃歌、小市民的喜びでなく、悲しみの最中にそれを仰ぎ見た者だけが抱く喜びであり、あらゆる物を超越した無限の喜びである。愛もまた宿命的で抵抗できない。トリスタンとイゾルデの媚薬によって象徴される愛である。」かくして、小澤征爾は世界に翔き、それを聴く東京は東洋的官能に身を委ね、かつて不安と退廃をタンゴに託した伯林は、今クリミナル・タンゴ(罪深いタンゴ)に身を委ね、60年の歴史を安らげようとする。

[日記帳のボナール]
(1987.6.1記)