Flaneur, Rhum & Pop Culture

一体化するコッポラの映像とP・グラスの生演奏
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 フランシス・コッポラが制作したドキュメント映像と音楽だけの映画『コヤニスカッティ』(1982)と、ジョージ・ルーカスも加わった第二弾『ポワカッティ』(1987)という巨大な異彩を放つ二作品がある。『コヤニスカッティ』はアメリカ先住民ホピ族の言葉で「平衡を失った世界」を意味する。いまや一国世界主義に陥ったアメリカの大地を鳥瞰するカメラは、荒れ野の岩肌と人いきれする摩天楼とを背中合わせにして物質主義の虚しさを暴く。『ポワカッティ』では、地上に降りたカメラが大量消費の被害である第三文明の人々の営みに眼をやる。タイトルは、ホピ族の言葉で「自己の繁栄のための他者の生命力を消費する存在」を言う。
 この二作品を持って、16名の管弦楽とともにあのフィリップ・グラスが来日する。もともと反西洋音楽だった反復音楽を現代音楽から引きずり出して、ポップス音楽として確立させたミニマルの雄だ。古くは演出家、ロバート・ウィルソンとの『浜辺のアインシュタイン』、新しくは現在公開中のスティーブン・ダルドリ−監督の『めぐりあう時間たち』などで精力的に活躍中だが、とくに何年にもわたって力を注ぐのが、すでに50万人を動員したというこの二作品のライブ演奏上映だ。
 今回の初来日ステージで、映画よりも緊密で大胆な、音と映像が一体化したパフォーミング・アーツを体験するだろう。そして圧倒されつつも、地球が抱える憎しみや差別と同時に、われわれ日本人が失ってしまった〈足るを知る〉ネイティブや第三世界の人びとの愛しさに胸がしめつけられるだろう。