Flaneur, Rhum & Pop Culture

人生よありがとう
[グラシアス・ア・ラ・ヴィ−タ]
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 太古の約13,000年前、ベーリング海峡経由でなく、大平洋にあったム−大陸を伝って南米に上陸した(私見)モンゴロイドはインディオと呼ばれた。後、白人と混血した文化をメスティーソと云い、フォルクローレという南米の民俗音楽を生んだ。奴隷だったアフリカ大陸の黒人と白人が混血したムラート文化はマンボやビギン、又はサンバやランバダを生んだ。

 80年代のワールド・ミュージック大流行のご時世、立て乗り音楽のムラート系はもて映やされ、欧米や日本の音楽商人の餌食になり、やがて廃死に向ったレゲエは何を語るか。対して、社会現象的には蚊屋の外に置かれたが、肉体の奥深い箇所に届く音楽言語を表現するフォルクローレやタンゴは根強くあった。―アルゼンチンの偉大なメスティーソである歌う巫女、メルセデス・ソーサがやって来る。

 77年に大野一雄翁がスペインの舞姫に捧げた「ラ・アルヘンティーナ頌」を発表した頃、名前に魅かれてメルセデスのアルバム『アルヘンティーナの女』を手にした。震えた。特に入水自殺した詩人アルフォンシーナ・ストルムにオマージュした『アルヘンティーナと海』の、揺らぎの声は天を突き抜け空と海が溶けあうのを幻視した。その作曲者でありピアニストである、フォルクローレとクラシックを切り結ぶアルゼンチンの重鎮のアリエル・ラミレスが、ホセ・カレーラスと作った、『ミサ・クリオージャ』のメルセデス・ソーサ版が新しく手元にあって、ポルトガルのアマリア・ロドリゲス亡き今、アルゼンチンが生んだ、チェ・ゲバラ、アストル・ピアソラ、アタウアルパ・ユパンキに続く聖者をどう待てば良いのだろうか。泣くかもしれない。