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トリコロール/白の愛
TROIS COULEURS/BLANC

VOL.77
 青、白、赤の三色は自由、平等、博愛を表すフランス革命の象徴。この理念に愛を介在させて、ミステリアスな『二人のベロニカ』の監督クシシュトフ・ケェシロフスキは愛の三部作('94)=『青の愛』をパリで、『白の愛』をワルシャワで、『赤の愛』をジュネーヴで同時連作した。
 一流の腕を持つポーランド人のカロル(ズビグニエフ・ザマホフスキ)はフランス人の美しい妻ドミニク(ジュリー・デルピー)とパリで暮らしていたが、性的不能者となり離婚を申し渡される。出掛けた裁判所で鳩の糞に歓迎されて似合う不格好男(カロル)は、無一文となり途方にくれる。地下道で出会った同郷の死にたがっている男ミコワイの助けで、トランク内の荷となりほうほうの態で祖国に帰るが、別れた妻ドミニクへの想いは一途だった。
 「それじゃない!隣の高級のビボロバ(ウォッカだ。」酒屋で買った酒を土産に老いた百姓の土地買収に成功した両替屋のカロルは、即ち大金持ちになる。それにしても、日本で千三百円のビボロバは”高級ウォッカ”で、これで騙された土地代が数百坪で些か五千ドルだとはカルチャーショックだ。荷抜けにあった帰国用トランクからカロルが出てくるのもお笑いだが、社会柄を思うと櫛笛の悲しさほど切ない。喜劇仕立ての意匠の中で、監督は愛に関して懐疑的だと云うより茶化して観せるが、失望と執念、復讐と嫉妬、悲しみと喜びの果て、試練を経た後に薄暮のようにあぶり出される透明感のある愛の哀しみが情緒ある作品の質を維持している。