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日曜はダメよ
NEVER ON SUNDAY

VOL.74
 ギリシャの女優メリナ・メルクーリが亡くなった。68才だった。ハリウッドの赤狩りE・ドミトリクに告発されたジュールズ・ダッシン監督と『宿命』(’56)で出会い結ばれるが、以来このコンビ作品は10本を越える。『掟』(’58)でジーナ・ロロブリジーダと、『夏の夜の10時30分』(’66)ロミー・シュナイダーと、遺作となった『女の叫び』(’78)でエレン・バーンスタインと、共演者にお株を奪われた様に決して演技達者ではなかった。ラシーヌのギリシャ悲劇の現代版『死んでもいい』(’61)が、堕ちゆく不義の母を描いて最も魅力的だったが、何といっても一番印象に残るのはカンヌ女優賞の『日曜はダメよ』(’60)。
 米から古代ギリシャ研究にきたホーマー(ジュールズ・ダッシン)は、コーヒーを注文してバカにされ、「ウーゾ(ギリシャ・リキュール)、男の酒だ!」と脅された酒場で、エーゲ海の太陽のような娼婦イリヤ(メルクーリ)と出会い神秘ギリシャの化身を感じる。
 肴を食べて幸せ、男に触れて幸せのイリヤに古代哲学の失墜を思うプラトン的発想のホーマーは、教養を授け救おうとするのだが........所詮、復弦楽器ブズーキが掻き鳴る中、次々にウーゾが干され、グラスが割られて、現代ギリシャの洗礼を浴びることになる。
 隈どりした様ないかつい目鼻立ちと大柄な躰で、スクリーンのみならず、反ファシストとして7年間故国を追われ、軍事政権崩壊後、10余年も文化相として民衆の”自由の女神”として光を与え続けた女優の葬列に、3月10日、世界から30万人もの人々が集ったという。