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クライング・ゲーム
THE CRYING GAME

VOL.68
 黒人娼婦とうだつの上がらぬヤクザの情熱をハードボイルドに描いた秀作『モナリザ』('86)と対をなすN.ジョーダンのラブ・サスペンス『クライング・ゲーム』('92年度アカデミー脚本賞)は、究極の愛と性に深く切なく迫り、細部にまで身じろぎもさせない。        季節のないどんよりとしたベルファースト郊外、捕虜交換目的で森林の中の小屋に監禁された英黒人兵(ジョディ/F.ウィテカー)とIRAのテロリスト(ファーガス/S.レイ)に友情が芽ばえる。“ここを出たら何がしたいか ?” ---アイルランド解放を希求する男は“ロンドンに残した女(ディル)とマルガリータを飲みたい”というジョディとの約束を果たすべく、ディル(J.デヴィットソン)に会いにロンドンに渡る。無名の市民(ジョ−)に化けたファーガスは、バーテンダーを介して次第にディルに近づく。ジョディの代役でマルガリータを飲る辺りまでは良かったが、即ちディルの魅力の虜になり、バーテンダー特製のまじないの酒“愛の誓い”を酌み交わすに及んで、虚実皮膜の性の魔刻に入り込む。                                その夜の意表をつく、だけど悲しい衝撃! ! IRAの殺人指令と、愛する人の為何ができるか---ファーガスは苛酷なゲームの第二章へと自らを陥し入れる。それは、引きずる過去(ジョディ)との格闘、イソップ的寓話サソリとカエルの性(さが)の生死をかけた涙のゲーム、超越した性の使者・現代のアンドロギュヌスか。ボーイ・ジョーイの唄う“クライング・ゲーム”が妖しく流れる。