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愛と哀しみの果て
OUT OF AFRICA

VOL.66
 “自然と獣と人間の知恵と尊厳=アフリカ”の死を神の啓示的に撮った『ジ・エンド・オブ・ザ・ゲーム』の写真家ピーター・ビアードが、即ちアフリカに狂奔させた本に出会ったのは、若干16才の時だった。アフリカの精神を生命や事象に置き換えて、静謐な世界を謳ったアイザック・ディーネスンのこの自伝小説『OUT OF AFRICA』を映画化したのが、S.ポラックの同名作品。アカデミー賞を7部門も獲得している。
 デンマークの富豪の娘カレン(M.ストリープ)は、また従兄の男爵と結婚。'13年、蓄音機と猟銃とモーツァルトを携えてケニアを訪れた。無限の夢と幾多の難苦、夫の淫行で梅毒にかかり、故国へ戻るのだが、デンマークはもはや異国でしかなかった。二度目のモンバサ入り。コーヒー農園と学校を開くが、時は第一次大戦下、英の植民地化は進み、サファリは変わりゆく。狩猟家デニス(R.レッドフォード)に誘われたカレンは、死を想う所=野生の奥地でのキャンプのワインと抱擁で、アフリカと自分の対峙の変化を知らされる。
 夫との離婚、デニスとの別れ、そしてコーヒー園に神がやってきて全てを焼き尽す。“農園は君の物ではない”といったデニスの言葉の真実に目醒め、キクユ族の召使いの白い手袋をぬがしてやって愛の地を去る。
 モンバサの街で待っていたのは、かつて到着時、追い出された女人禁制のメンバーズ・クラブ会員が迎えるジョン・ジェームソン(アイリッシュ・ウィスキー)で祝杯する別れの儀式だった。