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会議は踊る
DER KONGREァ TANZT

VOL.62
 1814年、ナポレオン失脚後の欧州新秩序を決める「ウィーン会議」を題材にしたオペレッタ映画『会議は踊る』('31独エリック・シャレル監督)のワルツの会場として印象に残っているレドーテンザールが、昨年暮、全焼した。ハプスブルグ家のホーフブルグ王宮だった。
 列強の元首、大臣と共に王宮に乗り込んだロシアのアレクサンドル皇帝は、即ち、手袋屋の娘(リリアン・ハーベイ)に惚れるが、会議を主宰するオーストリアの宰相メッテルニヒは、色で相手を腑抜けにして議事を独裁しようとする。そんな策略を横目に影武者を歓迎パーティーにやり、ワイン・ガーデンで逢い引をする皇帝と娘に、“新酒祭のワイン(ホイリガ)と主題歌「ウィーンと酒」の大合唱の甘い祝福が浴びせられる。<数年前、チェルノブイリの被害を受けたホイリガ(Heuriger)(酸を少し含んだ新ワイン)が、又、ロシアのトムスクの死の灰を浴びようとしているのは、苦い歴史の皮肉か!?>そして、有頂天の娘が馬車の上で歌う主題歌「唯一度だけ」の超移動撮影に圧倒される。
 影武者がサモワールで紅茶の馳走になる時、角砂糖を何個も入れるシーンには庶民と砂糖の縁遠さを思わせる世情と、歓楽の日々に“会議は踊る、されど進まず。”
 そこへ“ナポレオン、エルバ島脱出!”の報。バカ殿(シムラケン)達は即時妥協し、皇帝も娘の元を去り帰国してしまう。
 復活ナポレオンの百日天下後、「ウィーン体制」は1848年迄続くと云う、真に世の裏面史は此様に漫才である。