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殺人!=MURDER

VOL.36

 '25年に監督デビューしたA・ヒッチコックのトーキー第三作目に当たる英国作品が『殺人!』('30)
 ロンドンの劇団の看板女優が殺され、呆然自失で現場にいた同じ劇団の女優が逮捕される。足元に血のりが付いた火かき棒と空になったブランデー瓶が残されていた。――女優は死刑を判決されるが、有名な俳優、劇作家である陪審員の一人、サー・ジョンは疑問を抱く――。ひげを剃りながら判決の日のラジオ放送を聞く時の独白シーンは、トーキー初の実験的試みだ!次いで、執事が持ってきたブランデーカクテルをヒントに“現場でブランデーを飲んだ第三者がいた!”と確信を得ると、にわか探偵となって独自の調査を開始する。被告や被害者と仲間だった〈容疑者〉をハムレット流劇中殺人劇の新作オーディションで誘い出し、今やサーカスのブランコ乗りに身を隠した場所に追い詰めると〈容疑者〉はなんと女装の同性愛者だった。当然、犯人の楽屋には隠し用もなく精神安定剤=マーテルの瓶が置かれていた。犯人はある覚悟を秘めて、最後の空中ブランコに昇る。まるで絞首台に昇るように……。
 「ヒッチコック作品としては、めずらしい謎解き映画ですね」というトリフォーの質問に、「そう。犯人探しのミステリーは好きじゃない。映画的じゃないんだよ。でも、この映画には初ものづくしがたくさんある。おもしろい映画だった」と、当人の弁。