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麗しのサブリナ=SUBRINA

VOL.34

 キャデラックのリムジン、ムーディなダンス・ミュージック、マンハッタンの大事業家、ロングアイランドの大邸宅、幾人ものお手伝い――アメリカを豊裕にした典型的'50年型WASPの世界が、ビリー・ワイルダー監督の『麗しのサブリナ』('54米)。
 ララビー財閥の運転手の娘サブリナ(O・ヘップバーン)は、2年のパリ留学ですっかり洗練されたレディになって帰ってくる。かつて、木の上から眺めていた屋敷のパーティで、今は財閥次男のディヴィト(W・ホールデン)とシャンパンにダンスを楽しんでいる。兄のライナス(H・ボガード)も弟を騙して逢引をする。弟の替りにダンスをし、弟の替りにキスをする。“七年目の浮気”を観る為、ライナスのオフィスに呼ぶ。「早く取ってくれ、指が凍る。」と、自家製フローズン・ダイキリをサブリナに手渡す。真白い氷にきちんと添えられた二本のストロー。又、会長のララビー氏のズボンのポケットにはいつもオリーブ瓶が忍ばせてあり、激しい業務の合間にたびたび自ら味わう――最後のオリーブが瓶底に張りついてどうしても取れないがあきらめない。で、最後はカクテルグラスを瓶に注いで満足する。オフィス内とは云え、流し上の棚には、びっしり詰まったオイルサーディン、クラッカー、チーズ、ジュース類、オリーブ。こだわりの'50年代の粋が詰まっている訳で、又、カクテルが最も似合う時代だったと云える。