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グランド・ホテル
       =GRAND HOTEL

VOL.31

 '29年のビッキ・バウム原作の『グランド・ホテル』が、現在、ブロード・ウェイで再劇化されて評判だが、'32年、監督E・グールディングによって映画化されている。その作劇法に於て伝説になった名作だ。
 時は'28年、破滅的軽文化に満ちた歓楽都市ベルリンで一番のホテルに去来する異人種達。人気下降の気位の高いバレエ・ダンサー(G・ガルボ)。躰を張ってデビューの機会を睨う若い女速記者(J・クロフォード)。今やホテル荒しの男爵(J・バリモア)。死期を宣告され残る日々を金で興ずる老簿記(L・バリモア)。合併工作を練る卑劣な工場のボス(W・ビアリー)。――それぞれの話がバラバラに進むのだがやがて、泥棒に入った男爵はダンサーと恋し、速記者フレムは男爵の名と工場ボスの金の間で踊り、老簿記はボスに「ここであんたの命令は効かない!」と啖呵切り、バーでルイジアナ・フリップを注文する。側にきたフレムにも勧めるが、彼女はアブサンを注文する――老人は甘いカクテルを、娘は強烈なリキュールを――老簿記は生れて初めてのダンスに生れて初めての幸福に浸る。やがて殺人事件が……
 ホテルの主の様な廃人ドクターの独白“誰も客の素性は知らぬ。君が去れば別の誰かが君の部屋の同じベットに眠る。全ては変らない。ホテルは元のままだ。”――人と時代の光と影を丸飲みして吐き出す。グランド・ホテルは我々の住むこの世界でもある。