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ジャスト・ア・ジゴロ=JUST A GIGOLO

VOL.30

 第一次世界大戦後からナチス台頭直前のベルリン。時代に翻弄される一人の陰鬱なジゴロの死を描いた『ジャスト・ア・ジゴロ』('78西独)は、アントニオーニのあの『欲望』の主演俳優デビッド・ヘミングスの監督作品。自身もナチス将校で出演している。
 大戦を独軍人として戦ったポール(D・ボウイ)は死の感覚が麻痺している。敗戦のショックで車椅子のロボトミーと化した厳格な軍人だった父、トルコ風呂で働く母、かつての大邸宅は今やペンションとなり、俳優の卵シリー(S・ローム)や娼婦が住む。その高級娼婦に“恥は別の時代のもの”だと教わり、希望と野心と自身を喪失。元の上官でホモの少佐(ヘミングス)に誘われるまま入った地下組織から追われ、今や女王となったシリーのいるキャバレーに入り浸ってるある晩、男の導きで男爵夫人連隊が待つホテル・エデンに連れ込まれ入隊審査を受ける。セメリング男爵夫人(M・デートリッヒ)の“ドン・ペリニヨン。ダンスと音楽とシャンペン、過去を忘れ楽しむ最高の方法よ”の一言でジゴロ連隊に入隊する。戦場は、金と年令と道徳を持て余したケバケバ夫人達の待つ享楽と頽廃の海だ……
 デカダンな華美と忍び寄る軍靴の響きがシンクロする刹那的20年代のベルリンの巡る季節は冬。因に、ポールに御執心の欲求不満の未亡人をキム・ノヴァク、ポールの母をマリア・シェルが演じている。