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イヴの総て=ALL ABOUT EVE

VOL.22

 『八月の鯨』の大女優ベティ・ディビスが10月6日パリの病院で死去した。彼女は2度も他作品でオスカーを獲ているが、唯一となれば監督J・L・マンキウイッツの代表作でもある『イヴの総て』('50米)が最高傑作だろう。
 演劇界最高の栄誉サラ・シドンズ最優秀女優賞を贈られる若い女優イヴ(アン・バクスター)を蔑視する四人の目指しがあった。大女優マーゴ(B・デイビス)と彼女の男で演出家のビル・劇作家ロイドとその妻だ――物語はそこからフィードバックする。田舎出の少女イヴはドラマチックな芝居仕立てで不幸な生い立ちを演出し、彼等に巧妙に取り入り、純粋無垢を装う。利発で勤勉完璧な付き人振りだが、舞台袖から眺めるマーゴへの鋭い視線が印象的だ。ハリウッドから帰ってきたマーゴの家でのビルへの歓迎誕生パーティーでも皆(殊にビル)がイヴを持ち上げる事にマーゴは悪い予感が働き悪酔いする。そして「愛の夢を弾いて!」「4回弾きました。」「じゃ次は5回目よ。」パーティーは暗然。ドライマティーニも5回目を数え、仲間やハリウッドの連中(M・モンローがチョイ役で好演!)を前に暴れる――ピアノが“ストーミー・ウェザー”を弾く――がこの大女優の直感は次第にイヴの総てを暴いていくことになる。そして観客には、マーゴも若きイヴもベティ・デイビスの姿と二重像に映し出されて行く。