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キューバ・リブレ=Cuba Libre

VOL.15

田舎の日曜日」の監督B・タベルニエが作った魂の映画が「ラウンド・ミッドナイト」('86)
  B・パウエルとL・ヤングをモデルにしたテナ−奏者デイル(D・ゴードン)が'59年、パリにやって来る。アパートじゃ、朝から晩迄、寝着にスリッパで“クソ料理作りか”と女ボスにドヤされる音仲間の“でも少なくとも、ここはパリだ”という台詞が良い。酒と薬に溺れる天才デイルに、霊感を聞いた貧乏美術家フランシスとの友情を軸に、魔屈的ビバップの世界が展開する。場所はジャズクラブ「ブルーノート」。ホワイト・リカーを一気に煽った男がそのままブッ倒れるのを横目で見て“同じ奴をくれ”と注文するデイル。御機嫌とりのマネージャーが、キャップのコルクでグラスの縁を濡らし、“いい演奏頼むぜ、ラムコークだ”――デイルは喜んで飲む。「ニューヨークの秋」の歌詞が浮かばない悲しさを知るフランシスは、たった一皿のパンと秘かに作ったワインの水割りで待遇す。盗み、集りで酒を飲り病院を往復しても、夜の演奏をマイ・レディ(サックス)に賭ける――。
 フランシスの親切と悲しみは、遂にデイルに断酒を決意させるが、それは同時に別れでもあった。
 創造の過酷さと愛と悲しみに満ち満ちて、骨にささった魂がスクリーンから突き出していた。