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機関銃=LANSON pire & fils RUMS

VOL.13

 フィルム・ノワールのバイブルとも云うべき「現金に手を出すな」('54仏)は、ジャック・ベッケルの代表作。マックス(ジャン・ギャバン)とリトンは5千万フランの金塊を盗み出す。ジューク・ボックスから流れるグリスビーのブルース。――だが、リトンの情婦ジョジ(ジャンヌ・モロー=チンピラ女を初々しく演じていて、3年後、「死刑台のエレベーター」で見せた気だるく熟成した女優とはとても想えない)の裏切りで、勢いづくアンジェロの知る所となり、二人はマックスの隠れ家に身を潜める。
 「ナントの酒だ。この仕事を最後に静かに暮せることを夢みてたよ…」 最後の晩餐のように酌み交す。パジャマを着て歯を磨きベッドに着く二人の初老の男の変らぬ友情に満ちたシーンが続く。遂にリトンは捕まり金塊と交換条件をつきつけられる。旧友のクラブ経営者の地下室から引き上げた木箱には LANSON pire & fils RUMS ―中味の機関銃が火を吹きアンジェロ一味を皆殺しにするが、リトンが殺られ金塊も火の海の中、今や機関銃も無用となり元々入っていた LANSON RUMS も遂に幻の酒と消え、全てが終る。
 この映画を期にJ・ギャバンは独自のスタイルを確立させ、アンジェロ役のリノ・ヴァンチェラはデビュー作ながら敵役を堂々とこなし、大物俳優の道を辿るが、今や共に故人となる。