ロビーは猫と呼ばれた元宝石泥棒だが、足を洗ってリビエラで悠々自適の暮らし振り。
映画「泥棒成金」('55)は「裏窓」の次にA・ヒッチコックが撮ったルパン式の軽妙なラブ・サスペンスで、初めてのフランス・ロケ作品。
彼の手口を真似た泥棒が出没し、たちまち警察に追われるはめになるが、身の潔白を証すため、宝石を首に飾った中年婦人に近づく。オクラホマ出身の成金未亡人だが元来品が良い。「酒はバーボンに限るわ。シャンパンなんて海に捨てちゃえば、作ってから80年も待つなんてバカらしい話よ。坊さんが作ったかも知れないが、オクラホマ生れの私には鼻につんつんするばっかりよ。」言葉を飾らなく気持良い。この未亡人の娘がグレース・ケリー。当然、愛が絡んで進行する。
後半の大詰め、貴族の仮装舞踏会ににせ猫もお巡りも誰も集まる。皆シャンパンを飲ってる中、「バーボンは?」と、またしても郷土精神を注文する。
「あの美しすぎる空は大きらいで、フィルターを使って黒ずませた。」と、ヒッチコックは裏話を語っているが、すました淑女が一瞬、男を誘う娼婦に変わるグレース・ケリーは美しすぎる。
そして、バーボンは今や世界を制覇する。
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