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実るほど頭の下がる稲穂かな
VOL.90

 包括経済協議が物別れに終り、「成熟した新しい日米関係」で「No」と云った直後、円高と携帯電話での経済制裁を浴びる今、3月からいよいよ「No」と云えなかった外米7割時代に突入する。何割がUS米で何割がパサパサタイ米とか、国産中粒と長粒外米の混米にすればとか、どっちが汚染されているかという問題ではない。あの外米の卑屈な苦みは戦後日本がよく知っているはず、味覚の問題に横すべりするなら、現在大騒ぎで酵素や油脂添加の飯米改良剤の食品科学研究が進んでいるという。
 一年の息災を祈念する七草粥ー“雑炊に馴れて尊い米の味”は神代からの教えであるし、節分(旧暦大晦日)で「鬼(ガイマイ)は外(コメ)!福は内!」と豆をまいた槌儺の行事の直後、悪鬼邪鬼払いの大雪の降臨は天の采配だった。雪月花の風雅を愛でるは、先人のみそみに習い、日本酒をもってするだろう。日本酒造りは米造りに始まると、コミック『夏子の酒』でも云っている、幻の酒「龍錦」を追い求めるドラマがあるのも瑞穂の国の物語。
 古来より多くの舶来文化を国内改良し自国文化にしてきた民族も、外来種で酒米の探求はできないよ。即物的な事でなく、文化の奥にある魂や精神の問題なのだから。土は痩せ、田は涸れ、森は禿げ、風土と芸能を失い、精神の仆れる前に。

(白麦米)

(1994.1記)