top top
top top top











極楽の入口で念仏を売る
VOL.70

  自称沖縄ファンの自分の無知を晒すのだが、「コロニオキナワ」の存在はショックだった。このボリビアの集団移住地は、サン条約後、基地に土地家屋を奪われた沖縄人(ウチナンチュウ)が、日本、琉球政府と米軍によって仕組まれた政策移住の所産である。〈素晴らしき新世界〉に誘われて着いた処は只の原始林〜この住民たちの必携品だったのが三線(サンシン)で、今もコロニア内で毎夜三線の音が響いていて、現在もウチナアグチと云うべき地球の裏のもう一つのオキナワの姿〜今、復帰20周年。
 本土資産はサンゴ礁を根絶し、街を新宿と化し、野山は米軍の実弾で裂け、日本人(ヤマトンチュウ)の宮沢が「20年前の米政治史上最大の決断だった」と返還を感謝し、昔の首相が「日本は世界に無い単一民族国家」と宣おうが、方言としてでは無い沖縄語(ウチナアグチ)を、三線と胡弓の独自のリズムに乗せて、未分化の呪術的(アニシズム)世界に即興する文化的誇りが二つのオキナワを在らしめてきたのだ。縄文よりも生もので在り続ける沖縄音曲の悠久の時間を目の当りにしながら、我ら日本人(ヤマトンチュウ)はアニマル物の良効率(コンピレーション)アルバムで西欧音楽(ジャズ)を聴いた振りをしている。(売れる物を生産するのだ、文化で飯は食えない)それにしても一人の音楽家にLP一枚分も付き合える我慢が無いんじゃ、まるでニワトリだよ。

(アベルとカイン)

(1992.5記)