top top
top top top











木乃伊取りが木乃伊になる
VOL.69

 今、東京で「未来派展」が開かれている。20世紀初頭、過去と決別した機械文明の前衛達は、自動車の速度、飛行機の高度、聳え立つ摩天楼に憧れと美を求め、時間と空間の同時性を絵画に導入した。その精神は、後の20世紀芸術(モダニズム)に革命をもたらし、ファシズムの勃興と滅亡を駆け抜け、近代都市と抱き合って未来に向って突き刺さっているようだ。
 ポストモダンを経て、今エコロジー流行りの20世紀末に、“環境植民地主義”の「地球環境賢人会議」が、「未来派」展と同時期開催されているのが妙で面白い。「南」を荒らし尽して得た富で「北」の愚人が「南」の環境を守ってやろうという滑稽振りは、50億ドルの基金の拠出額を13%から20%に拡大して会議を主導しようとした日本政府の有様に極まれりの感あり。
 N・Yの実験劇場の祖「ラ・ママ」が'61年設立後30年を経て閉鎖の危機にある。R・デ・ニーロ、R・ドレイファス、B・ミドラーを輩出し、我が大野一雄もここから世界に跳んだ。政府の大幅助成金カットが響いたらしい。(お上が前衛劇場に助成金を出しているのだ宮沢さん!)当然の如く先のスター達は資金集めに立ち上がった。―NGO(非政府組織)は「地球サミット」に一撃を報いるのか?地球環境凡人会議殿。

(鳥取産の二十世紀)

(1992.4記)