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三千世界の鴉を殺し主と朝寝がしてみたい
VOL.64

 14日、英国の名監督トニー・リチャードソンが死んだ。50年代後期から60年にかけて、〈怒れる若者たち〉と呼ばれる演劇、映画の運動を起し、『怒りを込めて振り返れ』('59)では日常的いらだちと犯行を、『サンクチュアリ』('61)では黒人問題を、『蜜の味』('61)では階級級社会の矛盾と貧困を、『長距離ランナーの孤独』('62)と『トム・ジョーンズの華麗な冒険』('63)では権威主義への反逆を把えた。仏ヌーベルバーグの主人公の様にカッコ良くなく、汚い成りした若者や労働者が社会に抗し、反モラルを貫き落ちてゆく姿を写実的に描破した世界を、当時素通りした文科系青年はいなかったはずだ。
 市場調査で映画が撮れるのか?トレンドでドラマが生きるのか?又、小劇団の数は身増の5千とも1万とも聞く。―48手の床技マニアルを学んだ時代と添い寝上手の君、否君達!安心したまえ、彼の死亡記事はこんなにも小さかったよ。過去形だよ。―『太陽の果てに青春を』('70)で、死刑判決を受けた主人公のミック・ジャガーが、裁判官を指して“GO TO HELL!"と、その指を下にするラストシーンを語る映画の友は今はあまりいない。

(抱寝の長脇差)

(1991.11記)