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飛んで火に入る夏の虫
VOL.46

 テレホンサービスが大忙しという。コンサルタントとしての会話サービスだ。最も多い相談内容は「擬似団らん」で相手を羨望させる、「親殺し」を虚言して憐憫を乞う、「夫唱不随」の妻への愚痴を吐く等の病い持ちであるらしい。

 ところが最近、このボランティア活動に大手企業が数社進出して来て、その病気振りを暴露している。電話相談にこと借りて、企業戦略の一環として時代傾向を探っているのだ。“何読んでるの?何食べてるの?何好きなの?”の質問に対する答えは生産活路を定める企業データにすり替る。

 そうして<健康>な偏差値感覚とシミュレーション世界を増長させ、火に入る虫達を更に病めさせる。時代とは一方の世界の一つの方便、犯される前に時代を超えて歪むことこそ肝要になる。――何故なら、世界は此方と彼方と2つあり、“2×2=4”というガリレオ的宇宙は、“2×2=5”というドフトエフスキー的宇宙を永遠に超えることはないのだから。

 風や木や、どんな地球物質と波動して知覚する愉しみや快感は、良い音楽であり良い絵であり真理なのだ。“△×□=○”の命題を一千年先に追って。

(グラハム・ベル)

(1990.5.1記)