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対岸の火事
VOL.42

 1945年2月、黒海沿岸のヤルタ。一人(ルーズベルト)は病気、一人(チャーチル)は老人症でスターリンは独壇場だった。会談の一週間後、間に自分の館を置き二人の館を切り離してヘゲモニーを握った。実に世界の不幸は三人の老人によって造られた。――今、「民主化」という言葉がキーワードとなって世界を襲う。「民主化」とは時代の政治的方便に過ぎなくて、云わば音楽や小説や映画から株、健康、服飾等の流行にも似たある操作によるものだ。権力を死守した毛沢東は痴呆症で死に、トウ小平は天安門だし、その影響で東欧は民主化なる!?戦後、「民主主義」をもらって45年の日本は首相と次期首相が訪欧、訪ソの露骨な功名争いで経済支援の得点かせぎだ。あのチャウチェスクだって処刑直前に「私は直接民衆と話がしたい」といった。権力の独裁と保全は人間の意識を破壊的に歪める訳で、その言葉をどちらがどう使うかでどっちにもなるから恐い。福岡入管局では指導者が難民を<平成の元寇>と呼び、追い散らす神風の吹くのを真剣に祈っている。何せ民主化の風がきついのだ。と、流行の風、世界の民主革命は今後、どんあ音楽、映画、小説の傑作を生むのだろうか?

(鬼平犯科帳)

(1990.1.1記)