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生々流転(「ビッグ・オ−との出会い」 ・抄より)
VOL.40

 「ぼくになにかしてほしいことはある?」とかけらはたずねた。「別に」「ぼくから必要なものは?」「別に」「君はだれ?」とかけら。「僕はビッグ・オーだ」とビッグ・オーは言った。「ぼくが待っていたの君らしい。ぼくは君の足りないかけらかも知れない」「でも僕はかけらなんか探していない」とビッグ・オー。「君のはまるところなんてないんだよ」「君とならころがれると思ったのに・・・・・・」「君ひとりならころがっていけるかもしれない」「ぼくひとりで?かけらはひとりじゃころがれないんだ」「やってみたことはあるの?」「だって角が尖っているよ」とかけらは言う。「角はとれて丸くなるものさ」とビッグ・オーは言う。「形も変わってゆくよ。とにかくぼくはもう行かなくちゃ・・・・・」そう言ってビッグ・オーはころがって行ってしまった。かけらはひとりになる。それから、ゆっくり体を持ちあげて先っぽで立ち…ひっくり返る。体を持ち上げ…引っぱって…ひっくり返り…前進を始める。そのうち角がとれてきた…やがて形が変わってきた…略… どこへ行くかはわからないけどちっともかまわない。ぼくはころがってるんだ!

(シェル・シルヴァスタイン 倉橋由美子訳)

(1989.11.1記)