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シジフォスの神話
VOL.35

 時の刃のように鋭利に、時に鞭のように剛く撓ない、躰を炎と燃やすアントニオ・ガデス舞踏団に客は蒼ざめる。至高の人体表現に心身の遊離は無い。ここに笑い話を一つ。

 1990年代のキーワードは「ジャパニーズWASP(何という言葉だ!)だ」と評論家氏曰く、WASP(?)にとって、これだけ流行っているアスレチックの肉体トレは時代遅れらしい。これからは「全ての中心である心を鍛えるマインドコントロールで自然と調和し、都会(都合?)の乱れたリズムを取り戻すことがストレス解消につながる。」つまり、ドーパミンが分泌されると脳波はαになり働きが活性化するが、焦燥や不安の場合、細胞の活動を抑制するアドレナリンが分泌されて脳波はβになりストレスを蓄積するので、「常に精神の解放と満足感を選ぶことが、トレンドなエリートの条件」なのだと。

 全くホモ・サピエンス(知恵の人)の驕りは尽きなく都市は手足のもげた未来を用意する。かくして、人間は本能が壊れ自然との繋がりを失った狂気の動物=ホモ・デメンスということ。――さて、我が身は夜毎、ベッドダンスで、アドレナリンを分泌することに励むとするか。ん?

(1989.6.1記)